国家公務員・経験者採用試験

 社会人が職務経験を活かして国家公務員を目指す場合、「人事院がとりまとめて行っている経験者採用試験(合同で行う試験と府省別の試験にさらに分かれる)」と「各府省が独自に行う選考採用」の2つのルートがある。ここでは前者について概説しておくことにする。
 国家公務員試験においては、2006(平成18)年度から人事院が公募手続き・教養試験・論文試験などを実施し、その後各府省で専門能力の検証や採用面接を行う「経験者採用システム」が導入された。2012(平成24)年度からは国家公務員試験の全面リニューアルにともない、「係長級・事務」の経験者採用試験として統合されている。なお、この経験者採用試験は長らく「総合職」相当に限られ、採用人数も少なかったが、2025(令和7)年からは総合職相当とは別に新たに一般職相当・地方機関採用の枠が設けられ、採用数も一挙に拡大した。
 なお、人事院が運営する経験者採用で府省別に行われる試験の中には国税庁の経験者採用試験が含まれる。2016(平成28)~2019(令和元)年にかけて、人手不足に悩んでいた国税庁が経験者採用試験を通じて国税調査官を大量採用(最終合格者は毎年200人超)に踏み切ったことで、国税庁の経験者採用にとくに注目が集まるようになった。その後は採用者数が減っていたが、2024(令和6)年以降は再び採用増に転じ、最終合格者数は3桁を回復している。
 国家公務員・経験者採用試験は毎年、10月(または9月末)1次選考の日程で実施されているが、前述したように、この他に各府省が独自の日程、内容で社会人経験者の選考採用(総合職・一般職)を行い、人材を確保しようとするケースが激増している。募集時期も多様で、実質的に通年採用・随時採用に近いものもあるので、関心のある方はぜひ各府省の採用情報をチェックしてみてほしい。

※2025年度実施例:経験者採用試験(係長級・事務 A区分[総合職相当])
(会計検査院・人事院・公取委・金融庁・財務省・国税庁・文科省・農水省・環境省など10府省が募集)
・受付期間:7/28~8/18
・受験資格:大学や大学院の卒業、修了から2年経過 職歴2年以上など
・試験内容:
 1次=(10/5)基礎能力試験(教養試験)・経験論文
 2次=(11/8or9)個別面接・政策課題討議

※2025年度実施例:経験者採用試験(係長級・事務 A区分[総合職相当])
(17の府省と2つの独法が募集)
・受付期間:7/28~8/18
・受験資格:必要な職務経験年数は学歴によって異なる(4大卒なら7年以上)
・試験内容:
 1次=(10/5)基礎能力試験(教養試験)・経験論文
 2次=(11/15or16)個別面接

※2025年度実施例:国税庁経験者採用試験(国税調査官級)
・受付期間:7/28~8/18
・受験資格:大学や大学院の卒業、修了から8年経過 職歴8年以上など
・試験内容:
 1次=(10/5)基礎能力試験(教養試験)・経験論文
 2次=(11月のいずれか1日)個別面接
 3次=(12月のいずれか1日)個別面接


<試験の特色>
・基礎能力試験(教養試験)+経験論文が基本だが、外務省(書記官級)ではもちろん外国語の試験も。
・基礎能力試験は30問すべて必答/2時間20分。一般知能分野が24問で一般知識が6問。
・経験論文は「これまでの取組と成果」と「これから取り組みたいこと」を述べるという、ごく標準的なスタイル。毎年変わっていない。

◆基礎能力試験

【国家公務員経験者採用・基礎能力試験(2025)】

問題番号 出題内訳
1~4 文章理解【現代文】(内容合致3+空欄補充1)
5~10 文章理解【英文】(内容合致4+空欄補充1+並べ替え1)
11~15 判断推理(集合・対応関係・位置関係など)
16~17 空間把握(折り紙など)
18~21 数的推理(面積・場合の数など)
22~24 資料解釈(グラフ・表)
25~30 時事・一般知識

※全体の問題数は30問と少ないものの、判断推理・数的推理・空間把握・資料解釈で14問と約半数を占める。このジャンルである程度得点できるように準備しておきたい。また、英文の問題数も6問で、全体に占めるウェイトは非常に大きい。英文の読解力に自信のある人には明らかに有利。問題の大半が知能分野(文章理解や数的・判断など)で、知識分野の問題は最後の6問のみだが、時事的な問題が多いのが特徴。
 地方自治体の経験者採用試験に比べると、問題は明らかに難しめ。準備をせずに臨んで最低基準点(9点/30問)や合格点(試験によって異なる)を確実にクリアするのは厳しいのではないか。事前の準備・研究は必須だろう。
※基礎能力試験の詳しい解答・解説は コチラ にあります。(リストの下の方です。)

◆経験論文
 共通実施の「経験者採用試験(係長級・事務)」の論文テーマは以下の通り(2024年)。内容的にはここ数年、ずっと同じだ(ただし、細かい表現は変わることもある)。

「①これまでの職務経験における取組と成果を、直面した困難とその克服策等に触れながら、具体的に述べてください。なお,特に論理的思考力、企画立案能力、対人折衝・調整能力をそれぞれ発揮したものを取り上げ、客観的な事実(いつ、どこで、だれと、何を、なぜ、どのようにして等)を明確にしてください。
 ②①で述べた取組と成果をどのように採用後の業務に生かせるか、受験申込みの際に届け出た第一志望府省及び第二志望府省のそれぞれについて述べてください。ただし、第二志望府省がない場合は、①で述べた取組と成果を、どのように第一志望府省採用後の業務に生かせるか述べるとともに、どのように国民全体の奉仕者として公務に生かせるかということについても述べてください。」


 共通実施分に加わらず、独自に経験者採用試験を実施している省庁では経験論文課題はそれぞれに異なるが、おおむね「これまでの取組と成果」と「これからどう活かすか/これから取り組みたいこと」を述べさせる形式だ。
 経験論文としてはごく標準的なテーマ(内容)。ただ、細かい字数制限がない(答案用紙1枚の両面を自由に使用可)ので、それなりに充実した分量の答案を事前に作成・準備しておく必要がある。
※経験論文の評定の参考にするため、第1次試験当日に所定様式での「履歴書」の提出が求められるので、こちらに事前記入する内容にも細心の注意を払う必要がある。

◆政策課題討議
 府省合同A区分などの2次試験で行われる。まず課題に関してレジュメを作り個別に発表、それに続けてグループ討議を行う……という流れだ。「プレゼンテ―ション試験」と「集団討論」を組合せたような独特の実施形態である。

≪実施結果≫
年度 区分 申込者数 最終合格
2025 府省合同A区分(係長級・事務) 204 27
府省合同B区分(係長級・技術) 917 371
総務省(係長級・技術) 26 3
外務省(書記官級) 147 12
国税庁(国税調査官級) 951 140
農林水産省(係長級・技術) 33 0
国土交通省(係長級・技術) 35 5
気象庁(係長級・技術) 47 16
2024 10府省合同(係長級・事務) 316 40
総務省(係長級・技術) 104 10
総務省(係長級・技術) 26 8
外務省(書記官級) 131 13
国税庁(国税調査官級) 580 104
農林水産省(係長級・技術) 15 1
国土交通省(係長級・事務) 55 5
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 27 3
観光庁(係長級・事務) 45 2
気象庁(係長級・技術) 52 17
2023 10省庁(係長級・事務) 569 41
総務省(係長級・技術) 39 7
外務省(書記官級) 178 18
国税庁(国税調査官級) 644 63
農林水産省(係長級・技術) 27 1
国土交通省(係長級・事務) 70 4
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 44 5
観光庁(係長級・事務) 94 2
気象庁(係長級・技術) 34 11
2022 13省庁(係長級・事務) 592 53
総務省(係長級・技術) 16 2
外務省(書記官級) 215 14
国税庁(国税調査官級) 856 53
農林水産省(係長級・技術) 35 1
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 58 5
観光庁(係長級・事務) 100 5
気象庁(係長級・技術) 50 20
2021 12省庁(係長級・事務) 609 62
総務省(係長級・技術) 34 3
外務省(書記官級) 144 10
国税庁(国税調査官級) 896 94
農林水産省(係長級・技術) 45 4
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 90 9
観光庁(係長級・事務) 124 3
気象庁(係長級・技術) 40 13
2020 12省庁(係長級・事務) 834 57
総務省(係長級・技術) 45 9
外務省(書記官級) 191 17
国税庁(国税調査官級) 1171 142
農林水産省(係長級・技術) 47 3
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 113 16
観光庁(係長級・事務) 203 8
気象庁(係長級・技術) 59 16
2019 12省庁(係長級・事務) 748 34
総務省(係長級・技術) 48 7
外務省(書記官級) 174 14
国税庁(国税調査官級) 1198 227
農林水産省(係長級・技術) 61 1
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 96 10
観光庁(係長級・事務) 143 5
気象庁(係長級・技術) 76 15
2018 11省庁(係長級・事務) 843 37
総務省(係長級・技術) 63 14
外務省(書記官級) 184 17
国税庁(国税調査官級) 1287 249
農林水産省(係長級・技術) 102 3
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 142 6
観光庁(係長級・事務) 218 7
気象庁(係長級・技術) 82 20
2017 12省庁(係長級・事務) 642 40
外務省(書記官級) 172 17
国税庁(国税調査官級) 1328 250
農林水産省(係長級・技術) 69 5
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 146 8
観光庁(係長級) 179 7
気象庁(係長級) 100 15
2016 13省庁など(係長級・事務) 851 32
外務省(書記官級) 200 23
国税庁(国税調査官級) 964 223
農林水産省(係長級・技術) 61 5
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 151 11
観光庁(係長級) 174 3
2015 15府省(係長級・事務) 743 39
外務省(書記官級) 151 30
国税庁(国税調査官級) 199 29
農林水産省(係長級・技術) 50 4
経済産業省(課長補佐級) 82 0
国土交通省(係長級・技術/地方なども含む) 126 11
観光庁(係長級) 95 4
2014 14府省(係長級・事務) 1061 72
外務省(書記官級) 157 25
会計検査院(係長級) 6 3
国税庁(国税調査官級) 128 18
農林水産省(係長級・技術) 65 3
経済産業省(課長補佐級) 171 1
国土交通省(係長級・地方など含む) 186 14
観光庁(係長級) 235 2
2013 5省庁(係長級) 626 19
外務省(課長補佐級) 114 0
外務省(書記官級) 212 14
農林水産省(技術) 61 1
経済産業省(課長補佐級) 380 0
国土交通省(技術) 50 3
海上保安庁(技術) 19 1
2012 金融庁 91 1
外務省 116 4
財務省 95 0
農林水産省(事務系) 241 1
農林水産省(技術系) 67 1
経済産業省(課長補佐級) 271 0
経済産業省(係長級) 309 1
海上保安庁 16 0
防衛省 95 0
防衛省 131 1
2011 金融庁 110 0
外務省 66 3
財務省 114 1
農林水産省(事務系) 330 1
農林水産省(技術系) 73 1
経済産業省 279 0
国土交通省(事務系) 351 3
国土交通省(土木系) 66 2
国土交通省(砂防系) 21 1
防衛省 131 1
国税庁(東京国税局) 109 20
国税庁(関東信越) 34 5
外務省(専門職) 111 8
皇宮警察 363 11
2010 金融庁 139 0
外務省 89 2
財務省 276 2
農林水産省(事務系) 294 1
農林水産省(技術系) 98 1
経済産業省 438 2
外務省(専門職) 93 17
皇宮警察 413 9